引用元: ・本当にやった復讐 2
相手は就職活動中の女子大生で、夫の後輩にあたる。
奔放で積極的なプリに言い寄られて押し切られたという言い訳は、嘘ではなかったと思う。
両家の親に報告し、責めて〆ていただいたものの、私自身は夫を責めなかった。
私にも至らないところがあったのかもしれない、共にこれから成長していきますと、泣きながら言い、再構築を決めた。
再構築当初は多少ぎくしゃくしたものの、私は良い妻であろうと一生懸命努めた。
家事を完璧にこなし、微力ながら夫の支えになりたいと申し出て、パートで仕事をし、学生時代に取得していた資格の更に上の資格を2つ取った。
夫婦でのお呼ばれには積極的に参加し、まめまめしく動き、役員の奥様に気に入っていただけるまでになった。
義実家との関係も良好で、過ちを許し、夫に尽くす私は、義両親自慢の嫁だった。
子供を産みたいと思っていたが、夫から「お互い二十代のうちは夫婦二人暮らしを楽しもう」と提案されたので、同意した。
しかし、夫の実家からの援助を受け、マンションを購入した頃から夫の様子が少しおかしくなった。
夫の言動の変化を日記に書き溜めてから、素行調査を依頼すると、見事にヒット。
二度目の浮気相手は同じ部署で働く派遣社員の女性で、夫と子供がある人だった。
次に何かあったら頼りなさいと、両親から紹介されていた、離婚問題に強い弁護士さんに連絡する前に、私は行動を起こした。
夫が二泊の出張に行く前日、まずは相手のご主人宛に「私の夫が、大切な奥様に手をつけて申し訳ない」という趣旨の手紙を出しておいた。
そして当日、夫が留守なのを承知で会社に向かい、相手の女性との面会を申し出た。
すると女性より先に夫の直属の部下が出て来て、とても慌てていたのは気のせいではないと思う。
本人(夫)の不在時に妻が会社に乗り込んで、派遣社員の女性に面会を求めたことに、部署の皆さんは興味津々の様子だった。
夫の部署には、透明な壁で仕切られただけの面会コーナーがあって、そこで女性と会った。
女性は最初から蒼白で、「夫がいつもお世話になってます。ご主人にもご挨拶のお手紙をお送りしました」と伝えたら取り乱して泣きだした。
泣くばかりの女性には慰謝料を請求する旨を伝え、上司の方にはお仕事中に申し訳なかったと謝罪して会社を後にし、それから両親に連絡を入れた。
夫がまた会社の女性と浮気をした、紹介されていた弁護士さんに相談する前に、我慢出来ずに相手の女性に会ってしまった、会社に乗り込んでしまった、恥ずかしいことをしたと泣いた。
父は夫と、夫の実家に電話をして、浮気の話を聞いた、証拠もある、弁護士を入れて徹底的にやる、娘(私)は今日から実家で預かると伝えてくれた。
そこからはあっという間だった。
調停に持ち込むまでもなく、離婚は成立。
私の両親はもちろん、夫の両親が大激怒で、慰謝料や財産分与は出来る限りの事をしろと、夫を怒鳴りつけ、夫はそれに従った。
そして私は相場の倍近い慰謝料と、夫婦で一年も住まなかった新築マンションを手に入れた。
離婚の際には、浮気の証拠と共に、私の日記が大変役に立った。
それは、夫のモラハラの記録。
共にこれから成長していく、再構築するなんて嘘っぱち。
全部、夫の両親を味方につけるための方便だった。
夫は一般的にはそれほど有名ではないものの、大変業績の良い企業に勤めており、結婚当初から同年代の男性よりだいぶ収入が良かった。
一方私は大学を出た後に実家で祖母の介護と家事手伝いをしていたので、職歴がなかった。
夫有責とはいえ、結婚一年未満で離婚したら、就職のあてもなく放り出されるのに等しい。
実家はそれなりに裕福だけど、祖母が施設に入り、両親と兄夫婦の同居話が出ていたので、戻るのは無理そうだった。
だから再構築した。
将来の離婚を見据えて、財産分与を目当てに、良い妻を演じた。
浮気を忘れたかのように振る舞い、夫を油断させた。
どうせそのうち私を軽んじ、何かしでかすと信じていた。
ついでに、針小棒大な日記もつけておいた。
例えば、その日私が作った食事について「これ好物なんだ。この前○○(店名)で食べたのも美味かった」と、私が作った物も美味しいというニュアンスで言ったのを「夫の好物を作って、上手く出来たと思っていたが、有名店のメニューと比較されてしまった…」というように。
実際は駄目出しでもなんでもない些細な発言を誇大解釈して、日記帳にモラハラ夫の証拠を積み上げていった。
家事はゴミ出しすら夫に頼まず、全部自分でやった。
たまに噂好き詮索好きのご近所さんから「奥さん、仕事をしているのに、家事はいつも一人で大変ね」などと言われると、弱々しく笑って「いえ、私なんか家事くらいでしか役に立たないので…」と答えておいた。
夫側も私の素行を調べたりしたようだったが、何を調べられても怖くなかった。
私は家事を完璧にこなし、内助の功を欠かさず、義両親にもよく尽くし、ご近所でも評判の良妻だったから。
夫は私から突きつけられたモラハラ夫認定に非常にショックを受けたようで、そんな覚えはない、むしろいつもよく褒めていた、感謝もしていたと主張したが、二度も不倫をした夫の主張が通るはずもなかった。
婚姻関係中、子供を作るかどうかは本当に悩んだ。
私自身は子供を産みたかったが、夫との子供は嫌だった。
いっそ行きずりの男との子供を托卵し、離婚後に養育費として長期に渡ってお金を引っ張ろうかと考えたこともあったが、リスクが大きすぎるのでやめた。
夫は完璧な妻を裏切った卑劣な男にならなければいけないのだから、私自身が浮気をしては台無しになる。
二度目の浮気の気配を感じてからは、証拠を集める為にしばらく泳がせておき、夫の浮気のせいでストレスが溜まった末の不眠による、心療内科の通院履歴を作っておいた。
断じて詐病ではない。
家事、仕事、離婚へ向けての準備で忙しく、疲れていたのは本当だし、いよいよ復讐の時が来たと思うとなかなか寝付けないのも本当。
二度目の浮気相手の女性に対して、本当は夫を再び浮気男にしてくれてありがたいくらいだったが、離婚計画に巻き込ませていただくことにした。
浮気相手の女性のご主人が非常に堅い職業で、私が大袈裟に動かなくても、相手のご主人が、夫の社会的地位を壊してくれると確信していたし、実際にそうなった。
夫は相手のご主人にも慰謝料を支払い、派遣会社の女性に手をつけたことで信用を失い、閑職に飛ばされた。
あんなに素晴らしい奥様を裏切るなんてと、酷く叱責されたと、夫の同僚の奥様から聞いた。
私が会社に乗り込んだ際、別の女性社員の方がお茶を出す為にドアを開けた時を狙って「仕事関係の女性に何度も手を出す主人が一番悪いんですよ」と、大袈裟にため息をついておいたのも役に立ったようだ。
私は今、マンションを賃貸に出し、ずっと勤めていたパート先の上司から紹介された会社に正社員として転職し、セキュリティのしっかりした単身者用マンションで一人暮らしをしている。
慰謝料や婚姻関係中のパート代を貯めたお金にはほとんど手をつけず、家賃収入とパート時代より大幅に増えた収入で、安定した生活を送っているが、なんとなく生きがいを失くしたような気分でもある。
達成感はあるけれど、幸せになれたのかどうか、よくわからない。
長い長い間よく頑張ったね
生活が安定してるのはいいことだし
これから先あなたの望む幸せがきっとやってくるよ
今後の生活もこのくらい計画的にして幸せになってください
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