引用元: ・今までにあった修羅場を語れ【その28】
当時、私は保険の営業をしていて、ある時母の職場の方が有り難いことに保険の見直しの相談をもちかけて下さった。
母と一緒にまずは挨拶がてら食事でもしながら状況を伺って方針を決めましょうということになった。
当日、先方の希望で隠れ家的なと言えば聞こえがいいが、半径1kmくらい田んぼと畑しかないど真ん中にポツンとある古民家を改装したレストランにてお会いすることに。
私は普段東京で車は持っておらず、その日は母の運転でレストランに向かった。
席に通された時にはすでに先方は着席されていたのだが、母の同僚(以下A)のほかに、私より少し年上に見える男性がいた。
挨拶してみれば息子さんだという。
せっかくなので息子さん(以下B)も一緒に相談を……とおっしゃるので、突然のことに驚きはしたが、2件の契約になったらいいかぁとホクホク気分でいたことは否めない。
さて注文……というところで母に電話がかかってきた。
母方の一人暮らしをしている高齢の親戚が、ぎっくり腰(後日判明)で動けなくなってしまったというヘルプコールだった。
母は急遽そちらに向かうことになり、私の帰り足を心配してくれたが、タクシーを呼ぶから大丈夫と送り出した。
Aさんによる息子自慢の分量がかなり多かったが、Bさんは地元の人間で知らない人はいない企業の良いポジションにいらっしゃるとかで、それは親として鼻高々、自慢したいよなぁと納得。
こちらとしても、近況とか簡単な財政状況とか、どんな目的でどんな備えを……なんてことを知りたいのでお客様の情報を早い段階でうかがえるのは嬉しい。
食事が一段落した頃には保険の方針もざっくりと整ってきて、本当に有り難いな、私も母孝行せねばな……などと思っていた矢先のことだった。
A「それで、(私)さん、いつ頃にこちらへ戻ってらっしゃるの?」
私「そうですね、一度東京に戻って設計書を作ったらすぐにでもお会いできるのですが、A様B様のご都合は」
A「いやぁね、違うわよ、式の準備とかあるでしょ?」
あまりにも唐突で、Aが何を言っているのかが全くわからなかった。
私「……何の準備ですか?」(式というワードが正しく変換できず、理解できていない)
A「やだ、(私)さんったら照れてらっしゃるの?」
B「式の前には新居を整えたいかな。最初の2年前くらいは2人で過ごしたいし」
A「あぁ、じゃあ式場が決まってから日程を決めるべきかしら」
B「そうだね、気に入った式場と日程が大まかにでも決まってからがいいと思う。式場も新居も(私)さん拘りたいだろうし」
私「あの、すみません、何の話ですか?」
A「あら、ごめんなさいね。(私)さんはお若いからまだピンと来ないかもしれないけど、準備は時間がかかるのよ」
私「すみません、一体何の準備の話ですか?」
A「Bと(私)さんの結婚式の準備に決まってるじゃないの」
Aの裏表のないキョトン顔が、今でもハッキリと思い出せる。
その隣で、Bが猛烈な勢いでもっておしぼりで顔を拭いていた、激しい動きも一緒に。
A「何がって、今日は2人のお見合いじゃないの。お母さまが居られなくなったのは残念だけれども」
B「聞いていた通り、素敵な方で安心したんですよ」
私「保険の見直しのお話とうかがっていましたし、さっきまでその話をさせて頂いてましたよね?」
A「そんな理由でも無いと、今の若い人はお見合いをしないんでしょう?」
私「そんなことは無いと思いますが、少なくとも私は仕事のつもりで参りましたし、それに」
B「だけど(私)さん、こうしてボクと母と食事をしてくれたじゃないか」
私「ですから、保険の見直しのためにお話をうかがいたくて、それに私」
A「あんなに良い雰囲気だったのに、返事を持ち帰る必要があるの?」
私「あくまで私は仕事としてお話をうかがっていただけです。それよりも、私は」
B「ボクの仕事も趣味(熱帯魚)も褒めてくれたじゃないですか。年齢かな?確かにボクはもう40歳に近いけど、(私)さんだってもう数年もすれば30歳だ。今どきこのくらいの年の差なんて気にしなくていいんですよ」
私「違います!そんなことじゃなくて!私」
A「Bは(地元企業)にしっかり勤めていますから、今後の生活も安心ですよ。だから何も心配せずにこちらへ戻ってきていいの」
私「ですから!そうじゃないんです!話を聞いてください!!」
A「(私)さん、何を心配されているのか全然わからないわ」
私「何を勘違いされてるのかわからないですけど、私はもう結婚しています!!!」
今度はABが私の言葉の内容がわからないようで、しばらくの沈黙があった。
私「ウソなんかではありません。結婚指輪だって肌見放さずつけてますし、私は3年前(当時)に結婚してます」
A「ウソよ、名前が変わってないじゃない!」
私「結婚前にご契約頂いたお客様もいらっしゃいますし、諸々の都合で会社では旧姓のままなだけです」
立ち上がって左手を印籠のように突き出して結婚指輪を見せつけると、やっと2人は黙った。
大声を出したので肩で息をしながらふと周りを見渡すと、席数が少ないレストランではあるが、数組いた他のお客がみんなこちらを見ていた。そりゃそうだ。
私「とにかく、私は結婚していますし、主人ともそりゃもうラブラブですので!お見合いなんて!有り得ません!!」
と、言い捨て、ABの真ん中にあった名刺をひっつかんで脱兎の如く店を飛び出した。
一度トイレに立った時に全員分会計は済ませてあったのだけど、私が駆け抜けた後を追ってきたABを店員さんが引き止めてくれた。
その日の朝、たまたまヒールが欠けてローファーみたいな靴にしていたのをこれ幸いと、車が追ってこれない畦道農道を走って走って一方通行が多発する細い道しかない住宅街まで走って、そこのマンションの影に隠れてタクシーを呼んで帰った。
ABは住宅街に入る頃までは車で遠巻きに追ってきていたけど、私の後を追ってこようとすると一方通行に阻まれるようにして逃げたので、住宅街に入る道を探して迂回していったようだった。
店員さんがかなり頑張って引き止めてくれてなければ、いくら車がこれない最短距離を走っても追いつかれただろうと思うので、感謝しかない。
後日、東京に戻った私の代わりに母にお礼を届けてもらった。
ちなみに地の利があったのは学生の頃の通学路だったから。
少しでも近道をするために自転車でギリギリみたいな道を攻めていたアクティブなズボラが役に立つ時が来るとは思わなかった。
Aは母と職場で会っても、一切声をかけて来なかったそうだ。
もともとそんなに話すようなこともなかったのだが、娘が保険の営業をやっていると母と別の方が話していたのを聞きつけてやってきたのがそもそもの発端だったので、それまで通りにもどっただけとのこと。
その後しばらくしてAは辞めていったらしい。
東京に戻って数日後、高校時代の同級生から電話があった。
進路が分かれてしまったので知らなかったのだけど、同級生はBと同じ地元企業に入社していて、Bに声をかけられたらしい。
「携帯電話を壊してしまい、データが全部とんでしまったので婚約者と連絡が取れない。高校の同級生と聞いたが、連絡先を知らないか?」と。
同級生とはfacebookで繋がっていて、私が結婚していることを知っていたため、Bを不審に思い知らないと答えてくれたそうだ。
念の為、Bに声をかけられた直後に私の連絡先を別の名前で登録してくれたとのことだった。
あと、同級生から聞いた話じゃBは全然いいポジションじゃなくて、年齢に見合わないヒラ社員だそうだ。
最後に、つい数日前の話。
facebookにBから友達申請がきた。
もうすっかりBの名前なんて忘れてて、アイコンの顔写真見てもピンとこなくて、誰だか思い出せなくて、共通の友人も見当たらなくて、保留。
丸1日くらい悩んで思い出した。
同級生に探りを入れてみたら、どうやらAが入院したとかなんとかで、Bは最近会社を休みがちになっているらしい。
介護要員確保したいんだろうけど、あの経緯でどうして私に目をつけたのさ。
恐らく地元企業関係のグループから同級生のfacebookみつけて、その流れで私に辿り着いたんじゃないかと思う。
最近もうfacebookなんてほとんど開きもしないから思い切ってそのままアカウントごとさようなら。
あとはこれ以上後日談ができないことを祈るのみです。
>>614さんみたいなまともな人は逃げるけど、そうでない見た目まともでも中身はモンスターみたいな人だったら逆に酷い目に遭うかもしれないのに、その辺りは想像もできないんだろうか
まあ、そうなっても自業自得だけどね
お疲れ様でした
私が保険の見直しのための会話だと思ってたのが向こうにとっては品定めだったんでしょうね。
母のLINEのアイコンは私とのツーショットなので、それで私の顔くらいは事前に知っていたかもしれませんが、こっちにその気が無いのにいきなり見合いにされてしまったのは本気で理解が追いつきませんでした。
大丈夫、それが普通
とんでもない親子に絡まれて災難でしたね、お疲れさまです
ちなみにですが、今でも旦那様とはラブラブなのですか?
ありがとうございます。
今でも超ラブラブです!(笑)
>>619
私は背丈は並なのですが、接客なので表情は柔らかで優しそうな感じを意識して作りますよね。
童顔というよりは単純にBより10歳若かったからというのはあるかもです。
ビジネス人格を好きになられても、その気遣いや優しさはお金が発生するからやっているわけで、オフの時に湧いて出てくることは無いんですけどねぇ。
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