引用元: ・百年の恋も冷めた瞬間 Open 8年目
大学生の時に、違う学部の男子学生とつき合い始めた。
彼は「おしゃれ」な人で、ファッションとか食べ物とか、ヨーロッパ系のものが好きだった。
互いにおつき合いは初めてで、おっかなびっくり初々しくやっていたが、
ある日、彼が「女の子の手料理って食べてみたい」と言い、
私も「部屋に招いて手料理を振る舞う」というのをやってみたかったので、
週末のお昼に一人暮らしのアパートに来てもらうことになった。
当日、彼はおみやげと言って、ラ・フランスを1個、持ってきた。
私は、というか実家では洋ナシを食べる習慣がなかったので、初洋ナシだあとはしゃいで、
「へえー!初めて食べるよ!普通に皮むいて食べるの?」
「それでもいいけどね、チーズと合わせてオードブルにするとうまいんだ。
特にカマンベール・チーズ。作ってあげる」
というので、キッチンを明け渡そうとすると
「チーズどこ?」
「え、カマンベール・チーズはないよ。朝ご飯用に、普通の(プロセス・)チーズならあるけど」
「えっ!!!」
彼は目の玉をひん剥いて
「カマンベール・チーズ買い置きしないの!?信じられない!!!」
カマンベール・チーズは好きだけど、お高いし、
それこそパーティやお呼ばれのオードブルかデザートで食べるくらいで、自分で買ったことはない。
しかしどうしても必要ならば、スーパーが近所にあるし、
私はどのブランドがいいかもわからないので、一緒に買いに行こうと頼んでみた。
彼はぶつぶつ言っていたが二人でスーパーに行って、お高いブランドのを買った(私が払った)。
そしてラ・フランスとカマンベール・チーズを薄く切って並べたオードブルを作ってくれた。
もちろん口には出さなかったけれど、
彼は私が「おいしくない」と思っているのが顔に出ているのに気付いたようで、
「これはこういう料理なんだ。フランスでは普通だ」と言い張り、
日常にラ・フランスとカマンベール・チーズを備えておかない生活が、
どれだけ「精神的に貧しい」か、延々と私に説いて聞かせた。
私はおとなしく「そうだねえ」と答えておいた。
これだけじゃ冷めなかったんだけど、追い打ちがかかった。
オードブルが上記のもので、あとは私が作った筑前煮と、お味噌汁とごはん、
生干し(ソフトタイプともいう)の身欠きニシン(以下、生干しニシン)の焼き魚だった。
彼は生干しニシンを初めて食べたらしく、「えっ、何これ!すごいうまい!」と、そればっかり食べた。
私が「お代わりする?すぐ焼けるから」と言うと「うん!」と皿を差し出した。
私は生干しニシンが大好きで、お取り寄せして常備している。
彼はお代わりをがっつきながら、「残りまだある?全部焼いて持ってきて」
その日は新しいのが着いたばかりで、1箱12片入り(1片が半身で、6匹分)あって、
一人2片ずつ出したのだが、彼は残りの8片を全部食い尽くした。
満腹した彼が迫ってきたんだけど、吐く息があまりにニシン臭くて、そこで冷めた。
適当なことを言って帰ってもらった。
後日「勉強が忙しくて」とか適当なことを言って別れた。
同じ大学なので時々顔を合わせたが、そのたびに「ニシン買った?」と聞いてくるので、
「買ってないよ(嘘)」と答えると「なんだ」と去っていった。
つくづく別れてよかったと思った。
追熟したラ・フランスのおいしさは、後に自分で買ってみて理解した。
その元カレもネット等の知識だけだったとゲスパー
フランス人でもチーズ嫌いな人くらい普通にいると思う
乙でした
おしゃれカブレの人にニシンだめ出しされるのかと思ったんだけど
そうじゃなくてよかったと思ってしまったw
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