会社に中途で入ってきた子(A君)の話。
A君は通勤に電車で会社の最寄り駅まで行って、そこから自転車で通勤している。
最寄り駅とはいえ駅から会社まで自転車で30、40分程かかるのにがんばるなぁと思っていた。
ある日A君に「A君の住んでるところなら車で半分くらいの時間で行けるのに車で行かないの?」と聞いてみたら
「僕、車が大嫌いで買わないと決めてます」とA君が答えた。
話を聞くと
・子供の頃から機械や乗り物、ロボットに興味がなく、その延長線で車に興味が全くなかったが、前の会社は自宅から自転車で5分の所に職場があったから車は不必要だった。
・しかし前の会社には車好きの人が多くて「車を持ってない男はダメ」「車好きじゃない男はおかしい」「さっさと車を買え」等の事を毎日言われてあまりいい印象を持たれていなかった。
・「家が近いから」「余裕がないから」「車に興味がないから」と何度も理由を話しても納得してもらえずに、毎日の様に言われたり怒鳴られたりした。
・休みの日にはほぼ毎週強制参加の食事会があって毎回の様に車でしか行けない場所で開催された。電車もバスも通ってない場所ばかりだったのでタクシーを使うか、他の人の車に乗せてもらうしかなかった。
・他の車に乗せてもらう為には運賃やガソリン代、エンジンオイル代や摩耗したタイヤ代等で最低2万円取られていた。
・もう少し安くならないかと交渉してら「車を所持するということはこれくらいお金がかかる!車を持ってないだけ生活が楽なのになんでワガママを言うんだ!」と言って電気スタンドを投げつけられた。
・食事会の時も飯を奢ることを強要されたので勘弁して欲しいと言ったら店内で怒鳴りつけられて店に放置されて先に帰られた。僻地にあるお店な上にタクシー代もなかったから地図アプリを利用して5時間かけて歩いて帰ったりもした。
・上司に報告しても「お前が車買えば解決することだろうが!」と怒鳴りつけられて車を持ってないお前がどれだけ異常か3時間かけて説教された。
・それが原因で精神的にも金銭的にも参ってしまった。車好きな人は陰湿で気性が荒い人しか存在しないのだと思い、それに平行して車も嫌いになって一生買わないと決めた。
と話していた。
流石にA君がおかしいと思ったので
「車が好きな人が皆が皆そんな考え方じゃないよ」
「実際車を買わないと生きていけない地域に住んでるのだから、車を持ってないことをおかしいと思われるのは当たり前だよ」
「嫌な思いしたかもしれないけど、一生買わないとか車好きは皆こんな人間だとかそんな極端な思考する方が異常だよ?」
「それにどれも言い方とか物言い一つで解決できた問題だよ?9割くらいA君の言い方に問題があったことがそういう扱いを受けた原因だと思うよ?」
と注意したけど
「多分どんな言い訳や弁明や養護があっても、僕はこの考え方を死ぬまで変えることはないですね」
とハハハ…と渇いた笑いをしてA君は持ち場に戻っていった。
その時、私はA君に対して恐怖と怒りを感じた。
「死ぬまで変えない」っていう言い方はないだろう。もっと柔らかい言い方しろよ。と腸が煮えくり返る思いと、「そういう人間と接してるのなら空気を読みなよ。簡単なことがなんでできないの?」という寒気を催す恐怖をA君に感じた。
確かに仕事は真面目で社内で一番一生懸命取り組んでくれてるけど、結構嫌ってる人が多い。
お菓子を手作りするのが趣味のA君は自分で作ったお菓子を持ってきて食べたりするのだけど、若い女性社員からは
「男がお菓子作りとか気持ち悪い」
「料理上手いアピールして自慢してる」
と陰口を叩かれている。
また読書が好きでたまに休み時間に小説を読んだりしてるが、
「気取ってる」
「頭いいアピールかよ」
と陰口を叩かれている。
ipod持ってるのに何故かCDウォークマンで洋楽を聴いてる時も
「今どきCDウォークマンで聴くとかおかしい。非効率すぎる。」
「英語がわからないのに洋楽を聴いてるバカ」
と陰口を叩かれている。
本人に指摘したら
「お菓子作りは趣味ですね。皆さんの分もお作りしましょうか?」
「子供の時から本を読むのは好きなので」
「CD音源が好きでたまに聴きたくなります。家でレコードを聴いたりもします。」
「洋楽はCDに付いてる日本語訳の歌詞カードや辞書で調べながら聴いてます」
「趣味は個人の自由ですから(にっこり)」
と言い訳を並べ立てるので、それを聴いた人間を更に怒らせる。
中には異動させろと総務に怒鳴り込む人間もいた。
A君は何も悪いことしていないのはわかっているけど、もう少しまともな立ち振る舞いを覚えてほしい。
前の会社も絶対にそれが原因なのに、それができないA君に恐怖を感じている。
何もしてなくても「人を怒らせる天才」って存在するんだなって思った。
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