引用元: ・本当にやった復讐 3
大学に入り、Aは大阪へ。オレは心機一転と思ったものの、友達や幼なじみが立て続けに3人死に、元々体が丈夫じゃないが体調も芳しくなく、不安になってAに連絡を取ろうとしたが、ほとんど反応がなくなった。
そして高校の部活の仲間で集まった飲み会。Aは「サークルめっちゃ楽しいし、彼女できたんだ。今めっちゃ幸せだよ」と言う。自分の中で何かが壊れた音がした。
Aはサークルでオレのことを話していたらしく、サークルの人はみんなオレを知っているらしい。オレはそのサークルの面々に会いたいと言い、その場で遊びに行く日取りを取り付けた。
それからオレは何度かAの下宿先を訪ねては、サークルに一緒に顔を出した。オレはひたすら「いい人」になり、みんなに好かれていった。Aは「ちょっと疎遠になってたけど、ここんとこよく来てくれるから頻繁に会えて嬉しいよ」と言う。
1年ほど経ち、すっからみんなと打ち解けたある日、Aの彼女がオレに聞いた。
彼女「Aって前はどんな人と付き合ってたの?知ってる?」
オレ「知ってるよ。いい子だったよ。」
彼女「じゃあなんで別れたの?」
オレ「それはプライベートに関わるからさ(笑)」
彼女「え、いいじゃん、教えてよ!」
一瞬間をおく。
オレ「Aとうまくいってる?」
オレ「…」
彼女「え、なに、どうしたんよ?」
オレ「これ、言おうか迷ったんだけど…」
彼女「うん」
オレ「前の彼女と付き合ってた時ね、こう…グーでガツンと…」
彼女「え…?殴った…?え、ウソでしょ…」
オレ「そんなことするようには見えないよね」
オレはバツが悪そうに言う。
彼女は、失望したような表情をする。
オレはニヤッとしそうなのを耐えた。
オレ「それで色々こじれちゃってね…」
彼女「そりゃこじれるよ!それは最低だよ…」
彼女はAの素行にショックを受けた様子でうつむく。―バカな女。
オレ「で、でもね、今は平気なんでしょ、きっと大人になったんだよ、アイツも」
彼女「そうだけど…少しだけ怖いかな(苦笑)」
オレ「もし不安になったり、万が一手を出されたりするようなことがあったら、いつでも連絡してきて。何とかしてあげるから」
一方で、サークルの方に顔を出すと飲みに誘われたりもするようになり、Aがバイトの日にサークルの人たちと飲みに行く機会があった。
「なあ、Aってさ、高校時代からあんな感じなん?」
オレ「そうだね、まっすぐでピュアな感じかな」
「A、お前のこと親友って言ってたよ。仲良いんだな」
その言葉に虫唾が走った。
オレ「仲良いよ、とっても」
「よく連絡とるの?ぶっちゃけ嫌いなとことこないん?」
オレ「連絡はね…してもあんまり返ってこないんだよね(笑)強いて言えばそれが難点かな」
「それダメだろ!お前が相談したいことあって連絡しても返ってこないんだろ?」
オレ「まあね(笑)でも、オレ高校の頃から結構Aに頼ってたし、仕方ないかな。多分めんどくさいんだよ(笑)」
「そこ付き合うのが親友だろ!アイツひどいな~!」
オレ「もう慣れたから平気だよ(笑)」
「お前優しすぎるだろ~。いいヤツは損するなぁ。Aがそんな薄情とは知らなかったなぁ」
オレ「めんどくさがりなだけじゃない?」
「それを薄情って言うんだよ!」
その場にいる人がみんな同意した。その場にいなかったメンバーにも後日伝わったようだ。
大阪人て本当おしゃべりだから、都合がいい。
A母「どちら様?」
オレ「あ、A君の友達の○○という者です」
A母「あー!Aによく話聞いてるわよ!」
オレ「え、やだなあ、A君どんな話してるんですか?」
A母「別にそんな悪口みたいなこと言ってないわよ(笑)で、どうしたの?」
オレ「ちょっとA君にお返ししたいものがあって…」
A母「そうなの。ちょっと上がってく?」
オレ「あ…じゃあ…ちょっとだけ(笑)」
家に上がり込み、MDウォークマンを差し出し、経緯を説明。
A母「やだ、ご丁寧にどうも。捨てちゃってもよかったのに」
オレ「いえ、こうしてお母さんにもお会いできてよかったです」
A母「やだ、うまいわね~!ところでAったら最近全然帰ってこないのよ、どうしてかしら?」
オレ「忙しいんじゃないですか?」
A母「あの子実家が嫌いなのかしら…何か聞いてない?」
オレ「んー…」
A母「やっぱり実家嫌いって?」
オレ「……」
その頃、メールを続けいたAの彼女から遂に誘いがくる。
「2人で神戸観光しない?案内してあげる」
彼女「なんか浮気みたいだね(笑)」
オレ「見る人が見ればね(笑)でも楽しかったよ」
彼女「私も。なんか…Aといるとあの話思い出しちゃって…」
完全にAの暴力の件について洗脳されている。
オレ「手…出されたりした?」
彼女「してない。してないけど不安で…」
オレ「ねえ…その不安さ…」
彼女「うん」
オレ「オレじゃ解消してあげられないかな?」
彼女「それって…」
オレ「わかってるよ。いけないってわかってるけど…でも君がそんな不安な日々を過ごしてるなんて、オレも心苦しい。決して軽い気持ちじゃない。オレは真剣だよ」
その夜、オレはA彼女と一夜をともに過ごした。
「神戸観光楽しかったね♪Aといるよりずっと!今度はどこに行こうか?」
送信メールを削除する。
彼女と別れた後、オレは神戸から大阪のA宅へと向かい、サークルに顔を出す。
周りの人たちのAを見る目が、少しよそよそしかった。笑いをこらえるのに必死だった。
Aの家に戻ると、Aに「彼女が浮気してる」と告げられる。ひどく落ち込んでいた。
オレは慰めつつ言う。「きちんと話し合えよ。オレはちょっと明日は用事があるから早々に帰るけど」と。
Aは頷き、翌朝オレは学校の前までAを見送り、帰るフリをした。もちろん、本当に帰るのではなく、見守るために後からひとりで中に入る。
Aは彼女を呼び出し、廊下で2人で話をしていた。
彼女「いないよ」
A「なあ、怒らないから正直に言えよ!」
Aが彼女の肩をつかもうとすると、彼女は怯えたように振り払い、サークルのみんなの元へ逃げ出した。暴力の件、こんなに簡単に信じるとは。
「A、あんた今つかみかかってたようだけど、まさかこの子殴ったんじゃないでしょうね?聞いたわよ」
A「殴ったりするわけないじゃん!聞いたって何を!」
「しらばっくれるのか?最低だぞお前」
サークルのリーダーが言う。
どうやらA彼女はAの暴力の件についてみんなにベラベラ喋っていたようだ。嬉しい誤算だ。
A「でもこいつ浮気したんだ!」
「浮気した?そんな言いがかりつけて殴ったの!?」
リーダー格の女が強い口調で言った。
A「いや、だから殴ってなんかないって!」
男リーダー「ちょっとがっかりしたな…」
A「待ってって!!意味わかんねえよ!!」
Aはやけでも起こしたのか、男リーダーの胸ぐらにつかみかかった。
他の男子たちがAを押さえつけるのが見えた。
それを見届けて、オレは帰路についた。
阪急線支線のガラガラの車両に乗った時、おかしくて笑いが止まらなかった。
A、お前にもやっと、オレと同じ景色を見せてやれるよ。
居場所がない、助けてほしい、話を聞いてほしいと言っていた。
我ながらこんなに上手くいくとは驚きだ。まあ、Aが単純だからこそできた所業か。
今日から4日後に、オレは再びA宅を訪ねる。一通り話を聞いて慰めたら、全てを打ち明けよう。
最後の砦を失って、どん底に落ちたAが、一体どんな絶望の表情を見せてくれるのか、楽しみで仕方ない。
ま、やったことが真実なら「オレ」には
人生のどこかで巡り巡って相応のことが返ってくる。
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